筋トレの呼吸法【種目別早見表】吐く・吸うのタイミング
※この記事は2026年8月時点の情報に更新しています。
「重いものを持つときは息を止めて踏ん張るもの」——筋トレを始めた当初、私(コウ)はずっとそう思っていた。
チョコザップに10ヶ月通っても体脂肪率がまったく動かなかった原因のひとつが、実は呼吸だった。2025年7月にパーソナルトレーニングを始めた初日、トレーナーに「フォームが崩れているのは呼吸が逆だから」と指摘されて初めて気づいたのだ。
この記事では、「力を入れるときに吐く」という基本原則から、種目別の早見表、負荷帯ごとの3つの呼吸パターン、息を止めていい場面と危険な場面、腹圧(ブレーシング)の作り方、めまい・息切れなどトラブル別の対処法まで、研究データと週2回のパーソナル継続で得た実体験を交えて解説する。呼吸は道具も費用もいらず、今日のセットから変えられる数少ない改善ポイントだ。
筋トレの呼吸法の基本原則|力を入れるときに吐く

細かい種目別のルールを覚える前に、まず1行の原則だけ押さえてほしい。ほぼすべての筋トレ種目はこれで説明できる。
アメリカスポーツ医学会(ACSM)の運動処方ガイドラインでも、レジスタンストレーニングでは力を発揮する局面で息を吐き、息を止めた強い力み(バルサルバ法)を避けることが一般向けの推奨とされている。まずはこの1つを、どの種目でも共通のルールとして体に入れてしまうのが最短だ。
なぜ「吐くとき」に力が入るのか
強く息を吐くとき、腹横筋・腹斜筋といった体幹の深層筋が反射的に働き、お腹まわりが締まる。この「締まり」が体幹を安定させ、腕や脚が力を伝える土台になる。重いものを押すとき、くしゃみをするとき、テニスで打つときに自然と声が出るのも同じ仕組みだ。
逆に力を入れながら息を吸うと、胸郭が広がって体幹の締まりがゆるむ。最も力が必要な瞬間に土台が抜けるため、腰が丸まる・バーの軌道がブレるといったフォーム崩れにつながる。
鼻から吸って口から吐く(例外もある)
基本は鼻から吸って口から吐く。鼻から吸うと空気が加温・加湿され、横隔膜を使った深い吸気になりやすい。吐くのは口からのほうが速く大量に排出できる。
ただし高重量セットや、心拍が上がった終盤では鼻だけでは間に合わない。その場合は口も併用して素早く吸うほうが現実的だ。「鼻呼吸でなければダメ」と思い込んで吸気量が足りなくなるほうが、パフォーマンスへの悪影響は大きい。
吐くのは「一気に全部」ではなく「動作の間ずっと」
初心者にありがちなのが、挙げ始めた瞬間に「フッ!」と全部吐き切ってしまうパターン。これをやると動作の後半で腹圧が完全に抜け、最後の数センチで潰れやすくなる。
正解はストローで細く吹くようなイメージで、挙げている2〜3秒のあいだ吐き続けること。フィニッシュで吐き終わるように配分すると、腹圧を保ったまま最後まで力を出し切れる。
私は「フーッ」と長く吐く音を自分で聞きながら挙げるようにしてから、ベンチプレスの押し切りが安定した。音が途中で止まったら、そこで腹圧が抜けているサインだと考えている。
【早見表】種目別・呼吸のタイミング一覧

基本原則を種目に当てはめると次のようになる。迷ったらこの表だけブックマークしておけばいい。
| 種目 | 吸う(戻す・下ろす) | 吐く(力を入れる) | つまずきポイント |
|---|---|---|---|
| スクワット | しゃがんでいく間 | 立ち上がる間 | 最下点で息を吐き切ってしまう |
| ベンチプレス | バーを胸へ下ろす間 | 押し上げる間 | 胸で長く止めて息が続かない |
| デッドリフト | 床に下ろす間/引く直前に吸い込む | 膝を越えて引き切る間 | 吸う前に引き始めて腰が丸まる |
| 懸垂・ラットプルダウン | 体(バー)を戻す間 | 体を引き上げる間 | ぶら下がったまま呼吸を止める |
| ショルダープレス | 肩の高さへ下ろす間 | 頭上へ押し上げる間 | 反動と一緒に吸ってしまう |
| アームカール・サイドレイズ | 下ろす間 | 挙げる間 | 軽いので呼吸自体を忘れる |
| クランチ・腹筋 | 上体を戻す間 | 体を丸める間 | 吸ったまま丸めて腹圧が逃げる |
| プランク(静止) | 6〜10秒かけて静かに1呼吸 | お腹の固さは保ったまま | 苦しくて無意識に止める |
スクワット|しゃがみながら吸い、立ちながら吐く
立った姿勢で息を吸い込んでお腹を固め、その圧を保ったまましゃがむ。立ち上がりに入ったら細く吐きながら押し切り、立ち切ったところで吐き終える。
ポイントは「最下点では吐かない」こと。しゃがみ切った位置が最も腰への負担が大きく、ここで息を抜くと骨盤が後傾して腰が丸まる(バットウィンク)。スクワットの正しいフォームが崩れる原因の多くは、脚力ではなく呼吸のタイミングにある。
ベンチプレス|下ろす間に吸い、押し上げながら吐く
バーを胸へ下ろす2〜3秒で吸い、胸に触れたら間を置かず押し上げながら吐く。胸の上で長く止めるほど息が苦しくなり、フォームも崩れる。
10回前後のセットでは、1レップごとに吸って吐くリズムを最後まで崩さないこと。私はベンチプレスのフォームを直すとき、まず呼吸のリズムから整えたことで7〜8レップ目の失速が減った。
デッドリフト|引く前に吸い込み、引き切ってから吐く
デッドリフトだけは順番が特殊だ。バーを握った低い姿勢で先に息を吸ってお腹を固め、その状態のまま引き始める。膝を越えて引き切る局面で吐き、立ち上がってからリセットする。
床に戻すときも力を抜かず、下ろしながら次の吸気を入れる。デッドリフトの重量設定を上げていく段階では、この呼吸のルーティンが崩れた瞬間にフォームも崩れる。
懸垂・ラットプルダウン|引き上げながら吐く
体(またはバー)が近づいてくる=縮める局面で吐く。あごがバーの高さに達したところで吐き終わり、下ろしながら吸う。懸垂ができない段階の人ほど、ぶら下がった瞬間から息を止めてしまい、2〜3回で握力より先に呼吸が尽きる。
クランチ・腹筋|吐き切りながら丸める
腹筋種目は呼吸と収縮が直結している。体を丸めながら「フー」と吐き切ると、腹直筋が最後まで縮み切り、可動域の終わりで刺激が乗る。吸ったまま丸めると、空気がクッションになって縮み切れない。
プランクなど静止系|止めずに浅く長く回す
プランクのような等尺性(静止)種目では、腹圧を保ちながら呼吸だけを回す必要がある。コツはお腹の固さを維持したまま、肋骨の横と背中側だけを小さく動かすイメージで、6〜10秒かけて1呼吸するくらいのゆっくりしたペースにすること。
お腹が大きく上下しているなら腹圧が抜けている。逆に完全に息を止めているなら、30秒持ったとしてもそれは体幹の強さではなく我慢比べになっている。
負荷で変わる|3つの呼吸パターンの使い分け

「呼吸は絶対に止めてはいけない」と書かれた記事と、「高重量では止める(バルサルバ)のが常識」と書かれた記事があって混乱した人は多いはずだ。結論を言うと、どちらも正しい。負荷帯によって答えが変わるだけである。
| 負荷帯(1RM比) | 目安の回数 | 呼吸パターン | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 〜70% | 12回以上できる重さ | ①リズミカル呼吸(止めない) | 初心者・全員の基本 |
| 70〜85% | 6〜12回 | ②強制呼気(細く長く吐き続ける) | フォームが固まった中級者 |
| 85%以上 | 1〜5回しか挙がらない重さ | ③バルサルバ法(一瞬だけ止める) | 上級者・健康上の制限がない人 |
①リズミカル呼吸|1RMの70%までは止めない
12回以上挙がる重さでは、息を止めるメリットはほぼない。1レップごとに吸って吐くリズムを刻み、酸素供給を切らさないほうがセット全体の質が上がる。初心者はこの帯だけで十分に筋肥大する。
②強制呼気(FE)|70〜85%の中重量で使う中間解
意外と知られていないのが、この中間パターンだ。声門は開けたまま、すぼめた口から細く強く吐き続けることで、息を完全に止めずに腹圧をある程度高く保つ方法(強制呼気)である。血圧の急上昇を抑えつつ体幹の安定を得られる、リズミカル呼吸とバルサルバの中間解だと考えればいい。
私は8〜10回で組む日のスクワット(2026年6月時点で130kg×12回のフォームが固まってきた重量帯)ではこの強制呼気を使い、5回以下の日だけ後述のバルサルバに切り替えている。
③バルサルバ法|85%以上の高重量に限定する
バルサルバ法とは、深く吸い込んだあと声門(喉の奥)を閉じて息をこらえ、腹腔内圧を最大まで高めた状態で挙上するテクニックだ。Hagins らの研究(Spine, 2004年・30名)では、持ち上げ動作中に息をこらえた条件は、吐きながら持ち上げた条件より腹腔内圧が有意に高くなったと報告されている。腹腔内圧が高いほど脊柱は硬く安定するため、最大重量に近い挙上では合理性がある。
使う条件は明確だ。1RMの85%以上(1〜5回しか挙がらない重さ)で、スクワット・デッドリフト・ベンチプレスのような多関節種目のときだけ。しかも止めるのは1レップぶん(長くても数秒)で、レップの合間には必ず吐いて吸い直す。5回・10回と止めっぱなしにするのは、バルサルバではなく単なる息止めだ。
スティッキングポイントで吐き切ると挙がる
どの種目にも「ここで止まる」という最も力が要る局面(スティッキングポイント)がある。ベンチプレスなら胸から10cmほど押し上げた地点、スクワットなら立ち上がり始めの数十度だ。Kompf と Arandjelović のレビュー(Sports Medicine, 2016年)でも、この局面は関節角度による力の出しにくさが原因であり、通過の仕方が挙上の成否を分けると整理されている。
実践的なコツは、吐く量のピークをこのスティッキングポイントに合わせること。挙げ始めから吐き切ってしまうと、いちばん力が要る場所で腹圧が空になる。「止まりそうな地点で一番強く吐く」と決めておくだけで、同じ重量でも1〜2回多く挙がることがある。ベンチプレスの停滞を抜けるときにも効いた考え方だ。
息を止めるとなぜ危険?血圧・眼圧・失神のリスク

「息を止めるのはよくない」と言われても、具体的に何が起きるのかを知らないと本気で直す気にならない。数字で見ておこう。
血圧が一時的に極端に上がる
MacDougall らの研究(Journal of Applied Physiology, 1985年・ボディビルダー5名)では、レッグプレスを限界まで行った際の動脈血圧が平均で320/250mmHg、最大例で480/350mmHgにまで達したと報告されている。この極端な上昇は、息をこらえて力んだ局面で起きていた。
健康な人であれば数秒で戻るが、血管や心臓に持病がある人にとっては無視できない負荷になる。ACSMのガイドラインが高血圧・心血管疾患のある人にバルサルバを避けるよう求めているのはこのためだ。
力んだ直後にクラッとする理由
息をこらえると胸腔内の圧力が上がり、心臓に戻る血液量が一時的に減る。その状態から息を吐いて圧が抜けた瞬間、血圧が急降下して脳への血流が一時的に落ちる。これが「セット後に目の前が暗くなる」「立ちくらみがする」現象の正体(レジスタンス運動中の失神=ウェイトリフター失神)だ。
眼圧も上がる(目に持病がある人は要注意)
Vieira らの研究(Archives of Ophthalmology, 2006年・30名)では、ベンチプレス中に息をこらえた条件で眼圧が有意に上昇したと報告されている。緑内障やその予備群と診断されている人は、高重量での息止めを避け、眼科医に相談したうえでトレーニング方法を決めてほしい。
ありがちな失敗3つ(止める・逆になる・浅い)
- ①止めっぱなし…1レップだけのつもりが、セット全体を止めたまま。酸素が届かず後半で急に失速する
- ②逆になる…挙げながら吸い、下ろしながら吐く。最も力が要る局面で腹圧が抜け、フォームが崩れる
- ③浅く細切れ…「フッフッ」と小刻みに吐くだけで、吸えていない。二酸化炭素が抜けず苦しさだけが増す
私が最初にやっていたのは②だった。初心者がやりがちなNG行動のなかでも、呼吸の逆転は自分では気づきにくい。動画を撮るか、誰かに見てもらうのが最短の発見方法だ。
腹圧(ブレーシング)の作り方とドローインとの違い

「腹圧を高めろ」は筋トレで最も言われるアドバイスだが、具体的なやり方まで説明されることは少ない。ここで手順に分解しておく。
ブレーシングとドローインは目的が違う
| 項目 | ブレーシング(固める) | ドローイン(引き込む) |
|---|---|---|
| お腹の状態 | 360度に張り出して硬くする | おへそを背中側へ引き込む |
| 主な目的 | 高重量時の脊柱の安定 | 腹横筋の意識づけ・リハビリ |
| 使う場面 | スクワット・デッドリフトなど | 体幹の感覚づくり・ウォームアップ |
Grenier と McGill の研究(Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 2007年)では、ブレーシング(腹部を固める戦略)はドローイン(引き込む戦略)よりも腰椎の安定性を高めたと報告されている。ウェイトを扱う場面ではブレーシングを選ぶのが基本、と考えていい。
腹圧を360度で作る4ステップ
- 両手を腰の横(脇腹と背中の間)に当てる
- 鼻から吸い、手を外側へ押し返すように脇腹と腰まで膨らませる(お腹だけ前に出さない)
- 膨らんだ状態で、お腹を軽く殴られるのに備えるイメージで全周を固める
- その硬さを保ったまま動作を始め、挙げ切ってから吐く
感覚がつかめないときは、仰向けに寝て脇腹に手を当て、吸ったときに手が押し返される感覚を確かめるところから始めるとわかりやすい。立位でできるようになったら、軽い重量のスクワットで同じ状態を再現していく。
腹圧づくりのよくあるエラー
- お腹を前に突き出すだけ…前面だけ膨らみ、腰が反る。脇腹と背中側が膨らんでいるかを手で確認する
- 肩がすくむ・胸だけで吸う…息が上に入っている状態。肋骨の下側を広げる意識に変える
- 吸った瞬間に力が抜ける…吸気と固めるのが別動作になっている。吸う→固めるを1拍で行う
なお高重量のスクワット・デッドリフトでは、トレーニングベルトを併用すると腹圧を押し返す壁ができ、同じ吸気でもより高い圧を作りやすい。私も85%以上の重量を扱う日だけ着用している(軽い日に常用すると、自前で腹圧を作る力が育ちにくい)。選ぶなら幅が均一で硬さのあるパワーベルトタイプが扱いやすい。
胸式呼吸と腹式呼吸、筋トレに向いているのはどっち?

「筋トレは胸式?腹式?」という質問は多いが、正解は場面によって違う。二択で覚えるより、使い分けで覚えるほうが実用的だ。
| 呼吸の種類 | 特徴 | 筋トレでの出番 |
|---|---|---|
| 胸式(肋骨まわり) | 速く吸える・交感神経が優位になりやすい | セット中の素早い吸気 |
| 腹式(横隔膜中心) | 深く入る・リラックスしやすい | セット前の腹圧づくり/セット間の回復/トレ後の整え |
高重量前の「大きく吸い込んでお腹を固める」局面は、横隔膜を使った深い吸気=腹式に近い。一方、10回以上のセットの途中で毎回深く吸っていては間に合わないので、肋骨まわりを使った速い吸気=胸式寄りになる。
実践的にまとめるとこうなる。セット前は腹式で深く入れて固め、セット中は肋骨まわりで素早く回す。「お腹だけ」「胸だけ」と分けて考えるより、肋骨全体を360度に広げる感覚を持つほうが再現しやすい。
なお腹式呼吸そのものは、トレーニング後の静的ストレッチで副交感神経に切り替えるときに役立つ。使い所が違うだけで、どちらが優れているという話ではない。
呼吸トラブル別の対処法|めまい・息切れ・リズムの乱れ
実際のジムで起きるのは、教科書どおりにいかない場面のほうだ。症状別に対処法をまとめる。
セット中・直後にめまいや吐き気がする
多くは息の止めすぎ+急な圧の解放によるもの。その場でセットを中止し、座るかしゃがんで、吸う4秒・吐く6秒くらいの落ち着いた呼吸を1分ほど続ける。回復したら重量を1〜2段階落として再開する。
ただし、胸の痛み・片側のしびれ・強い頭痛・意識が飛ぶ感覚を伴う場合は自己判断せず、その日のトレーニングを終了して医療機関に相談してほしい。
セット後半で息が続かない
「吐き切れていない」ことが原因のケースが多い。息苦しさは酸素不足より二酸化炭素の溜まりで起きるため、吸う量より吐く量を増やすと改善しやすい。動作のテンポを一定にし、1レップ1呼吸を守る。
それでも続かないなら、単純に重量が高すぎるかインターバルが短すぎる。呼吸が整ってから次のセットに入るのが原則で、息が上がったまま高重量に入るのは危険側の判断だ。
呼吸が逆になる・リズムが崩れる
重量を20〜30%落として、声に出して「吐く」と言いながら挙げる練習が最短だ。声を出せる=息を吐けている、が確認できる。これを2〜3週間続けると無意識でも正しい順序になる。
自宅なら、床でのプッシュアップやゴブレットスクワットなど軽い種目で練習するのが一番早い。私も呼吸の順序を直したときは、重量を一度落として「フォーム+呼吸だけを確認する日」を作った。遠回りに見えて、結果的にはこれが最短だった。
プランクや腹筋で無意識に止まってしまう
静止系で止まるのは、腹圧を「息を止めること」で代用しているサイン。対策は、秒数を減らしてでも呼吸を止めない条件で行うこと。60秒止めて耐えるより、30秒でも呼吸しながら維持できるほうが体幹トレーニングとしては上位互換だ。
呼吸そのものを鍛える|呼吸筋トレーニングという選択肢
基本の呼吸が身についたら、次の段階として「呼吸する筋肉(横隔膜・肋間筋)自体を鍛える」というアプローチがある。呼吸筋トレーニング(RMT)と呼ばれる方法だ。
HajGhanbari らのシステマティックレビュー・メタ分析(Journal of Strength and Conditioning Research, 2013年)では、呼吸筋トレーニングがアスリートの持久系パフォーマンス指標を改善する効果が示されている。効果量は種目や対象により幅があるため万能ではないが、「セット後半に息が上がって回数が落ちる」タイプの人には検討価値がある。
- 器具なし…仰向けで手を脇腹に置き、5秒吸って8秒かけて吐く深呼吸を10回。就寝前でよい
- 負荷をかける…吸気に抵抗をかける呼吸トレーナー(市販品)を使い、無理のない強度から週数回
- 優先順位は低い…基本の呼吸・フォーム・漸進性過負荷が整っていない段階で手を出す必要はない
有酸素運動・セット間の呼吸は筋トレ中とどう違う?
筋トレの呼吸は「動作に同期させる」もの、有酸素運動の呼吸は「リズムを一定に保つ」ものだと考えると整理しやすい。
| 場面 | 呼吸の考え方 | 具体例 |
|---|---|---|
| 筋トレ中 | 1レップの動作に同期させる | 挙げるときに吐く/戻すときに吸う |
| セット間(インターバル) | 意識的に長く吐いて心拍を下げる | 吸う4秒・吐く6〜8秒を数回 |
| 有酸素運動中 | 歩数・ペースに合わせて一定に | 2歩吸って2歩吐く など |
セット間で最も効果的なのは「吐く時間を吸う時間より長くする」こと。副交感神経が働いて心拍が落ち着き、次のセットの入りが安定する。筋トレ後に有酸素運動を行う日も、切り替えのタイミングで一度呼吸を整えると動きが楽になる。
【実体験】呼吸を直してから変わったこと

私が呼吸を本気で意識し始めたのは、2025年7月にパーソナルトレーニングを始めてからだ。それ以前はチョコザップに10ヶ月通っていたが、呼吸のことなど一度も考えたことがなかった。体重84kg・体脂肪率は動かないままだった。
初回のスクワットで指摘されたのは「しゃがみながら吐いている」こと。つまり呼吸が完全に逆だった。最下点で息を吐き切っているので、立ち上がりで腰が丸まる。重量が上がらない理由が脚力ではなく呼吸だったと知って、正直かなり驚いた。
最初の1週間は呼吸に集中しすぎて逆にフォームが乱れたが、2〜3週間で無意識でもタイミングが合うようになった。私の場合、変化が最もはっきり出たのはスクワットの立ち上がりと、デッドリフトの引き始めだ。
特に効いたと感じるのは「吐く量のピークをスティッキングポイントに合わせる」意識だ。ベンチプレスが40kgから半年で80kgに伸びた時期、重量が上がるたびに呼吸のタイミングを微調整していた。今も週2回のパーソナルを継続しているが、重量を更新する日ほど、最初のセットで呼吸のリズムを確認してから入るようにしている。
「なんとなく回数をこなす」から「呼吸を合わせて狙った筋肉を意識する」に変わると、同じ重量でも刺激の入り方と疲れ方がまるで違う。呼吸は本当に「見えない基礎」だと実感している。
ただ、呼吸のズレは自分ではほぼ気づけない。私も10ヶ月間まったく気づかなかった。第三者に見てもらう機会を一度でも作ると、修正までの時間が一気に短くなる。
筋トレの呼吸に関するよくある質問
Q. 息を止めるとなぜダメなのですか?
短時間(1レップぶん)なら腹圧を高める利点があり、上級者は意図的に使う。問題は長く止め続けることで、血圧の急上昇(MacDougallらの研究では平均320/250mmHg)と、圧が抜けた直後の血圧低下による立ちくらみが起きる。初心者は止めない前提で覚えるのが安全だ。
Q. 鼻呼吸と口呼吸、どちらが正しいですか?
基本は鼻から吸って口から吐く。ただし高重量前の素早い吸気や、心拍が上がった終盤は口も併用してよい。「鼻でなければダメ」と我慢して吸気量が減るほうがデメリットが大きい。
Q. 高血圧と言われています。筋トレしても大丈夫?
主治医の指示が最優先だが、一般論としては息を止めない(バルサルバを使わない)・限界まで追い込まない・中程度の重量で回数を確保するのが基本方針になる。この記事の①リズミカル呼吸だけで組み立てれば十分に効果は出る。40代・50代から始める場合も同じ考え方でいい。
Q. 高重量と軽い重量で呼吸を変える必要はありますか?
ある。1RMの70%までは止めないリズミカル呼吸、70〜85%は強制呼気、85%以上(1〜5回しか挙がらない重さ)はバルサルバ、という3層で切り替えるのが実践的だ。初心者は最初の1つだけでいい。
Q. トレーニングベルトを使えば呼吸は気にしなくていい?
逆だ。ベルトは自分で作った腹圧を押し返して増幅する道具なので、息を吸って固める動作ができていなければほとんど機能しない。呼吸が先、ベルトは後である。
Q. 呼吸が身につくまでどれくらいかかりますか?
私の実感では2〜3週間。重量を20〜30%落とし、正しい順序でできる状態を繰り返すのが最短ルートだ。重い重量のまま直そうとすると、必ず元の癖に戻る。
まとめ|呼吸は今日のセットから変えられる

- 基本原則は「力を入れるときに吐く・戻すときに吸う」。まずこれだけでいい
- 吐くのは一気にではなく、挙げている間ずっと細く。ピークはスティッキングポイントに合わせる
- 負荷帯で使い分ける。〜70%は止めない/70〜85%は強制呼気/85%以上(1〜5回)だけバルサルバ
- 止めっぱなしは血圧・眼圧が上がる。高血圧・心疾患・緑内障・妊娠中の人はバルサルバを使わない
- 腹圧は360度に膨らませてから固める。ブレーシングが基本、ドローインは感覚づくり用
- めまい・息切れは「止めすぎ」「吐き切れていない」のサイン。重量を落として整え直す
私自身、10ヶ月気づかなかったことをプロに10分で指摘された。呼吸やフォームのズレは、自分の感覚では見つけられない類のものだ。独学で伸び悩んでいるなら、一度だけでも第三者の目を入れる価値は大きい。
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参考にした研究・ガイドライン
- MacDougall JD ほか「Arterial blood pressure response to heavy resistance exercise」Journal of Applied Physiology, 1985年(被験者5名・血圧平均320/250mmHg)
- Hagins M ほか「The effects of breath control on intra-abdominal pressure during lifting tasks」Spine, 2004年(30名・息をこらえた条件で腹腔内圧が有意に上昇)
- Hackett DA, Chow CM「The Valsalva maneuver: its effect on intra-abdominal pressure and safety issues during resistance exercise」Journal of Strength and Conditioning Research, 2013年(レビュー)
- Vieira GM ほか「Intraocular pressure variation during weight lifting」Archives of Ophthalmology, 2006年(30名・息をこらえた条件で眼圧上昇)
- Grenier SG, McGill SM「Quantification of lumbar stability by using 2 different abdominal activation strategies」Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 2007年(ブレーシング>ドローイン)
- HajGhanbari B ほか「Effects of respiratory muscle training on performance in athletes」Journal of Strength and Conditioning Research, 2013年(メタ分析)
- Kompf J, Arandjelović O「Understanding and Overcoming the Sticking Point in Resistance Exercise」Sports Medicine, 2016年(レビュー)
- American College of Sports Medicine「ACSM’s Guidelines for Exercise Testing and Prescription」(レジスタンス運動時の呼吸に関する推奨)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。持病がある方・体調に不安がある方は、必ず医師に相談のうえトレーニングを行ってください。
