「息を止めて踏ん張るのが正しいんじゃないの?」——筋トレを始めた当初、私はずっとそう思っていた。

チョコザップに10ヶ月通いながらも体脂肪率がまったく変わらなかった原因のひとつが、実は「呼吸法の間違い」だったと、パーソナルトレーナーに指摘されたときは本当に驚いた。呼吸ひとつでトレーニングの効率がこれほど変わるとは思っていなかったからだ。

この記事では、筋トレ中の正しい呼吸法を基本原則から種目別のタイミング、やってはいけないNG例まで、実体験を交えながら徹底解説する。意外と見落とされているこの「呼吸」を改善するだけで、トレーニングの効果は大きく変わる。

なぜ呼吸が筋トレ効果に直結するのか?

ジムでバーベルを構える前に深く息を吸い込み呼吸を整えている30代男性の写真

「呼吸なんて自然にできるはず」と思うかもしれない。しかし筋トレ中の呼吸には、パフォーマンスを大きく左右する3つの重要な役割がある。

筋肉への酸素供給が変わる

筋肉が収縮するためにはエネルギーが必要で、そのエネルギー生産には酸素が欠かせない。呼吸を止めたり浅くなったりすると、筋肉への酸素供給が途絶え、パワーが出なくなる。

適切な呼吸リズムを維持することで、筋肉は安定してエネルギーを生産し続けられる。「後半のレップ数が伸びない」という人は、呼吸の乱れが原因のことが多い。

腹圧が高まりフォームが安定する

息を適切に吸い込んで腹腔内の圧力(腹圧)を高めると、脊柱が安定して体幹がブレなくなる。これはスクワットデッドリフトのような高重量種目で特に重要だ。

腹圧を高めることで、重い重量を扱うときでも背骨への負担を軽減できる。体幹の「自然なコルセット」として機能するのが正しい呼吸だ。

血圧の急上昇を防げる

呼吸を完全に止めて力んだ状態(いわゆる「息を止めて踏ん張る」状態)では、血圧が急激に上昇する。これは健康リスクになるだけでなく、頭がクラクラしたり、最悪の場合は意識を失う危険性もある。

正しく呼吸することで、このリスクを最小限に抑えながらトレーニングを継続できる。

筋トレに効く「胸式呼吸」と「腹式呼吸」の違い

胸に手を当てて胸式呼吸を確認している30代男性と、お腹に手を当てて腹式呼吸を確認している対比の写真

呼吸法には大きく2種類ある。筋トレに適しているのはどちらかを正しく理解しておこう。

胸式呼吸とは

胸式呼吸は、息を吸ったときに胸(肋骨まわり)が膨らむ呼吸法だ。横隔膜よりも肋間筋を主に使い、肺の上部に空気を取り込む。息を吸うスピードが速く、瞬時に酸素を取り込めるのが特徴。

交感神経を活性化しやすく、筋トレのような「瞬発的な力が必要な運動」に適している。

腹式呼吸とは

腹式呼吸は、息を吸ったときにお腹(丹田あたり)が膨らむ呼吸法だ。横隔膜を大きく動かして肺全体に空気を取り込む。副交感神経を活性化しやすく、リラックスやストレッチ・ヨガに向いている。

筋トレに適しているのは胸式呼吸

筋トレでは「胸式呼吸」が基本。腹式呼吸はお腹が膨らむため腹圧を抜いてしまいやすく、体幹の安定が損なわれる。

ただし、完全に胸だけ・腹だけという意識より「肋骨全体を広げるように息を吸う」イメージの方が実践しやすい。胸が膨らみ、わき腹も少し張る感覚が正しい状態だ。

【基本原則】収縮時に吐く・伸展時に吸う

ベンチプレスで胸にバーを下ろす(伸展)ときに鼻から吸い、押し上げる(収縮)ときに口から吐いているイメージを横から撮影した写真

呼吸法の最も重要な基本原則は、シンプルに覚えられる。

力を入れるとき(収縮)→ 息を吐く
重りを戻すとき(伸展)→ 息を吸う

「力を入れるとき吐く」の理由

息を吐くときに体は自然に力が入りやすくなる。声を出す・くしゃみをする・ものを押す、といった動作が「吐く」タイミングと重なるのはそのためだ。

また、吐くときに腹腔内の圧力が適切に高まり、体幹が締まる。重量を持ち上げる「フィニッシュ動作」で吐くことで、最大限の力を発揮しながら体幹を安定させられる。

鼻から吸って口から吐く

基本は「鼻から吸って口から吐く」。鼻から吸うことで空気が温まり・浄化され、横隔膜をしっかり動かせる。口から吐くことで、素早く大量の空気を排出できる。

ただし高重量で力を最大限発揮したいときは、鼻と口を少し開けて両方から同時に吸い込む方が瞬時に多くの空気を取り込めることもある。あくまで「基本は鼻から吸う」と覚えておこう。

呼吸を止めずリズムを刻む

1レップごとに「吸う→吐く」のリズムを作ることが大切だ。重量が上がると「踏ん張るために止める」衝動に駆られるが、呼吸を止めると血圧が急上昇し、パフォーマンスも落ちる。

呼吸が乱れたと感じたら、無理に続けずインターバル中に呼吸を整えてから次のセットに入ろう。

【種目別】正しい呼吸タイミングを完全解説

ジムで複数の種目をこなす30代男性の写真。スクワット・ベンチプレス・デッドリフトの器具が並ぶ明るいジム環境

基本原則(収縮時に吐く・伸展時に吸う)を踏まえた上で、代表的な6種目の呼吸タイミングを確認しよう。

スクワット

  • 立った状態から下ろすとき(伸展)→ 鼻からゆっくり息を吸う
  • 最下点から立ち上がるとき(収縮)→ 口から「フッ」と息を吐く

下ろすタイミングで息を吸いながら腹圧を高め、体幹をロック。立ち上がりに合わせて吐くことで、最大の力を発揮できる。

ベンチプレス

  • バーを胸に下ろすとき(伸展)→ 鼻から息を吸う
  • バーを押し上げるとき(収縮)→ 口から息を吐く

胸にバーが触れた瞬間は息を止めず、そのまま押し上げに移行しながら吐く。止める時間を短くするのがコツだ。

デッドリフト

  • バーを持ち上げる直前→ 鼻から深く息を吸い腹圧を高める
  • バーが膝を過ぎて引き上げるとき(収縮)→ 口から吐く
  • バーを床に戻すとき(伸展)→ 息を吸いながら下ろす
デッドリフトは開始前の腹圧固めが特に重要。「ビッグブレス(大きく吸い込む)→ 腹圧を固める→ 引き上げる」の順番を徹底しよう。

懸垂(チンニング)

  • ぶら下がった状態から引き上げるとき(収縮)→ 口から息を吐く
  • 下ろしていくとき(伸展)→ 鼻から息を吸う

懸垂は体が上に行くタイミングで吐く。「顎がバーを超えるフィニッシュで吐ききる」感覚が理想だ。

クランチ・腹筋

  • 上体を丸める(収縮)→ 口から「フー」と息を吐く
  • 上体を戻す(伸展)→ 鼻から息を吸う

腹筋系は特に「吐きながら縮める」が効果的。吐くことでお腹が自然にへこみ、腹直筋への刺激が強まる。

プランク

プランクは他の種目と異なり、静止したまま呼吸を続ける。

  • 6〜10秒かけてゆっくりと「吸う→吐く」を繰り返す
  • 呼吸に合わせてお腹がぺったんこのまま維持できているか確認する

プランク中にお腹が上下に大きく動いているようなら、腹圧が抜けているサイン。呼吸しながらも体幹をロックし続けることが重要だ。

やってはいけないNGな呼吸法3つ

ジムでバーベルを持ち上げながら顔を真っ赤にして力んでいる男性の写真。息を止めて踏ん張るNG呼吸のイメージ

正しい呼吸を覚える前に、まず「やってはいけない呼吸」を知っておくことが重要だ。

①呼吸を止めてしまう

最も多い間違いが「息を止めて踏ん張る」こと。一瞬なら腹圧が高まる利点があるが(バルサルバ法・後述)、長時間止め続けると血圧が急上昇して危険だ。また、止めている間は筋肉への酸素供給が止まりパフォーマンスが落ちる。

顔が赤くなる・頭がクラクラする・目の前が暗くなる——これらは血圧が上がりすぎているサイン。すぐに休憩しよう。

②呼吸が逆になってしまう

「力を入れながら吸う・戻しながら吐く」という逆パターンも多い。これをやってしまうと、最も力が必要な収縮フェーズで体幹の締まりが失われ、フォームが崩れやすくなる。

重量が重くなるほど呼吸が逆転しやすい。「吐く=力を出す」を体に染み込ませるまで、軽い重量で繰り返し練習するのが近道だ。

③浅い・細切れな呼吸をしてしまう

焦りや緊張から、「フッフッフッ」と細かく浅い呼吸を繰り返してしまうケースもある。これでは酸素を十分に取り込めず、二酸化炭素も排出しきれない。結果として疲れが早く来て、セット数をこなせなくなる。

1レップごとに「しっかり吸って・しっかり吐く」1回の深い呼吸を意識することが大切だ。

上級者が使う「バルサルバ法」とは?

ジムで高重量バーベルをデッドリフトで引き上げる直前に腹圧を固めている30代男性の横から撮影した写真

「呼吸を止めてはいけない」と言いながらも、実は上級者はある局面で意図的に呼吸を止めるテクニックを使う。それが「バルサルバ法」だ。

バルサルバ法の仕組みと効果

バルサルバ法とは、息を深く吸い込んで声門(喉の奥)を閉じ、腹腔内の圧力を最大限に高めた状態で重量を扱うテクニックだ。

腹圧が極限まで高まることで脊柱への負担を大幅に軽減でき、最大重量に近い重量を安全に扱えるようになる。パワーリフターや競技者が高重量の1〜3レップを行うときに使う方法だ。

バルサルバ法の手順:①大きく息を吸い込む → ②声門を閉じて腹圧を固める → ③引き上げor押し上げる → ④動作の完了後に吐く

使うべき場面と注意点

バルサルバ法は万人向けではない。以下の条件を満たす場合のみ使うべきテクニックだ。

  • 高重量(自分の最大重量の85%以上)を扱うとき
  • 1〜3レップの低回数セット
  • スクワット・デッドリフトなどの多関節複合種目
注意:高血圧・心臓疾患がある人、初心者はバルサルバ法を使わないこと。血圧が急激に上昇するため、健康上のリスクがある。まずは「1レップごとに吸って吐く」基本呼吸を完全に習得してから取り入れよう。

なお、デッドリフトやスクワットで高重量を扱うときは、トレーニングベルトを併用すると腹圧がさらに高まり、脊柱保護の効果が増す。

【実体験】正しい呼吸を意識してから変わったこと

パーソナルジムでトレーナーが呼吸法を指導しながら横で補助している30代男性の写真

私が呼吸法を真剣に意識し始めたのは、2025年7月にパーソナルトレーニングを始めてからだ。

それまでチョコザップで10ヶ月間トレーニングしていたが、正直なところ呼吸はまったく意識していなかった。むしろ「踏ん張るときは息を止めるもの」だと信じていた。

パーソナルトレーナーに「フォームが崩れているのは呼吸が逆になっているから」と指摘されたとき、初めて自分の呼吸パターンを意識した。スクワットの下ろすタイミングで吐いてしまっていたのだ。

意識を変えた最初の1週間は、呼吸に集中しすぎて逆にフォームが崩れることもあった。しかし2〜3週間続けると自然と身体に染み込んできて、今ではまったく意識せずに正しいタイミングで呼吸できるようになった。

呼吸法を改善してから変わったこと:スクワット55kg×10回 → 半年後に130kg×12回。ベンチプレス40kg×12回 → 100kg×2回。もちろん呼吸だけが原因ではないが、フォームの安定と筋力向上には確実に関係していると感じている。

「なんとなくトレーニングをこなすだけ」から「正しく呼吸しながら筋肉を意識して動かす」に変わると、同じ重量でも疲れ方・刺激の入り方が全然違う。呼吸は本当に「見えない基礎」だと実感している。

まとめ|呼吸を制する者が筋トレを制する

ジムでトレーニング後に深呼吸しながら充実した表情を見せる30代男性の写真

この記事で解説してきた筋トレの正しい呼吸法をまとめる。

  • 呼吸は「筋肉への酸素供給・腹圧の維持・血圧コントロール」の3つに直結する
  • 筋トレには胸式呼吸が基本(腹式は腹圧が抜けやすい)
  • 基本原則は「収縮(力を入れる)ときに吐く・伸展(戻す)ときに吸う」
  • 吐くのは口から・吸うのは鼻から が基本(高重量時は両方から)
  • NGは「止める・逆になる・浅い細切れ」の3つ
  • バルサルバ法は上級者向け。高重量×低回数の種目に限定して使う

呼吸は「知っていれば誰でもすぐ改善できる」要素だ。フォームの改善や重量アップより即効性が高い場合もある。今日のトレーニングから、まずスクワット1種目だけでも「立ち上がりに吐く」を意識してみてほしい。

呼吸が身につくまでの目安は2〜3週間。最初はぎこちなくて当然。軽い重量で正しい呼吸を体に染み込ませてから、重量を上げていこう。

「呼吸を教わるだけでこんなに変わるのか」と私が実感したように、正しい呼吸法は筋トレを変える。ぜひ今日から取り入れてみてほしい。

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