久しぶりに運動したら、翌日ひどい筋肉痛で階段も登れない…そんな経験はありませんか?筋肉痛は誰にでも起こる症状ですが、痛みがひどいと日常生活にも支障が出てしまいます。この記事では、ひどい筋肉痛への対処法を段階別に詳しく解説します。急性期の痛みを和らげる方法から、回復を早める7つのテクニック、さらには予防法まで網羅的にご紹介。パーソナルトレーニングを続けている筆者の実体験も交えながら、すぐに実践できる方法をお伝えします。
ひどい筋肉痛が起こる原因とメカニズム

まずは、なぜ筋肉痛が起こるのか、そのメカニズムを理解しましょう。原因を知ることで、適切な対処法が見えてきます。
筋肉痛には2つのタイプがある
筋肉痛には大きく分けて2つのタイプがあります。
即発性筋肉痛(急性筋肉痛)は、運動中や運動直後に起こる筋肉痛です。急に激しい動きをして筋肉に強い負荷がかかると、血液の循環が悪くなり、痛みのもととなる物質(ブラジキニンやアデノシンなど)が筋肉に溜まることで発生します。
遅発性筋肉痛は、運動してから数時間から数日後に起こる筋肉痛です。一般的に「筋肉痛」と言うときは、この遅発性筋肉痛を指します。私たちが「翌日に筋肉痛が来た」と感じるのは、このタイプです。
遅発性筋肉痛が起こるメカニズム
遅発性筋肉痛は、運動によって筋繊維に細かい傷ができ、それを修復する過程で起こります。筋繊維が損傷すると、修復箇所に炎症反応が生じ、ブラジキニンやヒスタミンなどの発痛物質が分泌されます。これらの物質が神経を刺激することで、私たちは痛みを感じるのです。
筋繊維自体には痛みを感じる神経がありません。炎症が広がり、発痛物質が筋膜や周辺組織に到達してから初めて痛みが現れます。これが、運動してから筋肉痛が発生するまでにタイムラグが生じる理由です。
私自身、パーソナルトレーニングを始めた最初の頃は、トレーニング翌日の筋肉痛がひどく、階段の上り下りが本当に大変でした。特にスクワットをした後の太ももの痛みは強烈で、椅子に座るのも一苦労だったことを覚えています。
年齢と筋肉痛の関係は?
「年をとると筋肉痛が遅く出る」とよく言われますが、実はこれに医学的な根拠はありません。最近の研究では、同じ運動をした後の筋肉痛の出方に、年齢による時間差は見られないという報告もあります。
では、なぜそう感じる人が多いのでしょうか?年齢を重ねると、運動不足になりやすく、若い時より強度の低い運動をすることが増えます。運動強度が低いと筋肉痛が遅く現れるため、「年のせいで遅くなった」と感じてしまうのです。
ひどい筋肉痛への対処法【急性期編】

運動直後や痛みがひどい急性期には、適切な応急処置が重要です。この段階での対処が、その後の回復スピードを左右します。
痛みがひどい場合はまず冷やす
患部に熱感があり、痛みがひどい場合は、まずアイシング(冷却)を行いましょう。筋繊維がダメージを受けて炎症を起こしている状態なので、氷のうや保冷剤で傷んだ部位をしっかり冷やします。
冷やす時間は1回15〜20分を目安に、2〜3時間ごとに繰り返します。保冷剤は必ずタオルで包み、直接皮膚に当てないようにしましょう。低温やけどを防ぐためです。
無理に動かさず安静を保つ
痛みがある状態で無理に動かすと、筋肉痛が治りにくくなるだけでなく、肉離れを起こす恐れもあります。急性期は患部の筋肉をなるべく使わず、安静に過ごすことが大切です。
ストレッチをして痛みを感じる場合は、筋繊維がダメージを受けている状態です。無理に動かさず、痛みが落ち着くまで様子を見ましょう。
鎮痛剤や外用薬を活用する
痛みが強くて我慢できない場合は、市販の外用薬や鎮痛剤を活用するのも一つの方法です。
外用薬には、湿布、塗り薬、スプレー剤などがあります。炎症を抑え、痛みを和らげる成分(インドメタシン、フェルビナク、サリチル酸グリコールなど)が配合されています。湿布には患部を冷やす「冷感タイプ」と温める「温感タイプ」があるので、急性期は冷感タイプを選びましょう。
内服薬(解熱鎮痛薬)は一時的に痛みをおさえてくれますが、筋肉痛の根本解決にはなりません。あくまで補助的に使用し、温める・ストレッチをするなど、血行を良くすることも積極的に行いましょう。
筋肉痛を早く治す7つの方法【回復期編】

ひどい痛みが治まってきたら、回復を早めるための積極的なケアに移ります。ここでは7つの効果的な方法をご紹介します。
①入浴で血行を促進する
筋肉痛を早く治すための最も効果的な方法が入浴です。38〜40度のぬるま湯にゆっくりつかって体全体を温めると、血管が拡張して血流量が増し、筋肉内の血液循環も促されます。
入浴には以下のような効果があります。
- 血行が良くなり、筋肉に酸素や栄養が届きやすくなる
- 痛みのもととなる疲労物質が流れやすくなる
- 副交感神経が優位になり、心身ともにリラックスできる
- 水中の浮力で全身の筋肉が脱力しやすくなる
私もトレーニングの日は必ず湯船に浸かるようにしています。シャワーだけの日と比べて、翌日の筋肉痛の程度が明らかに違うことを実感しています。
②温冷交代浴でさらに効果アップ
入浴で全身を温めた後、温度差の刺激を与えることで血液の循環をさらに活発にする方法が温冷交代浴です。
やり方は簡単です。40度程度のお湯に3分浸かり、その後30度程度のぬるま湯を30秒ほどかける、これを2〜3回繰り返します。血管が収縮と拡張を繰り返すことで、疲労回復を促します。
サウナの後に水風呂に入るのも、同じ原理を利用したものです。筋肉痛がなかなか改善しないときは、試してみる価値があります。
③ストレッチで筋肉をほぐす

ストレッチには、緊張して硬くなった筋肉をほぐし、血行を促進する効果があります。特に筋肉の柔軟性が高まるお風呂上がりに行うのが効果的です。
筋肉痛があるときは、静的ストレッチ(反動をつけずに筋肉をゆっくり伸ばす方法)を行いましょう。各部位を10〜20秒程度ずつかけて、無理のない範囲でゆっくりと伸ばします。
痛みを感じるほど強く伸ばすのは逆効果です。「気持ちいい」と感じる程度の強度で、リラックスしながら行いましょう。
④軽い運動で血流を改善
痛いからといってじっとしていると、いつまでも血行が良くならず、筋肉痛の回復につながりません。無理をしない程度に、ウォーキングなどの軽い運動を行えば、次第に血流は良くなります。
激しい運動は避け、あくまで「軽く体を動かす」程度にとどめましょう。散歩や軽いジョギング、自転車こぎなど、低強度の有酸素運動がおすすめです。
⑤筋肉の修復を助ける栄養を摂る

血流不足と酸素不足で疲労状態に陥っている筋肉は、必要な栄養も不足しています。筋肉痛を早く治し筋肉疲労から回復させるためには、速やかな栄養補給が必要です。
特に重要な栄養素は以下の通りです。
たんぱく質
筋繊維の修復に欠かせない栄養素です。良質で低脂肪のたんぱく質(大豆製品、魚、鶏肉など)を選びましょう。アミノ酸スコアが100の食品(卵、牛乳、肉類、魚類など)がおすすめです。運動直後にプロテインと糖質を摂取すると、インスリンの分泌を促し、筋タンパク質合成が進みます。
BCAA(分岐鎖アミノ酸)
バリン、ロイシン、イソロイシンの3種類のアミノ酸の総称で、筋肉の分解を抑制し、筋肉のエネルギー源となります。マグロ・カツオなどの赤身の魚や鶏肉に多く含まれています。
ビタミンB群
糖質や脂質の代謝を助け、エネルギー代謝と疲労回復に欠かせません。特にビタミンB1は重要です。豚肉、大豆、玄米、チーズなどに多く含まれています。
ビタミンC・E、ポリフェノール
活性酸素を抑制し、筋力の回復を早めます。ビタミンCは血管や皮膚、腱などの結合組織の主成分であるコラーゲンの補酵素としても働きます。柑橘類、ベリー類、緑茶、大豆製品などがおすすめです。
ビタミンD
筋肉の回復を促進し、機能を向上させます。あん肝、しらす干し、いわしなど魚類に多く含まれています。
⑥質の良い睡眠で回復を促す
睡眠には、単なる疲労回復効果だけでなく、筋肉を修復したり緩めたりする効果があります。質の良い睡眠をとると成長ホルモンが分泌され、筋肉の修復が促されます。
成長ホルモンの分泌は、横になってから1〜3時間後が最も盛んになります。このゴールデンタイムを逃さず、しっかり休みましょう。筋肉痛を長く残さず、運動パフォーマンスを上げるためにも、睡眠は大切です。
特にトレーニングをした日は、いつもより早めに就寝し、7〜8時間の睡眠時間を確保することを心がけましょう。
⑦マッサージで筋肉の緊張をゆるめる
痛みのある部位をマッサージすると、血管が拡張して血流が増加し、痛みの原因物質の除去が促進されます。入浴中やお風呂上がりに行うと、より効果的です。
ただし、強すぎる指圧は筋組織を痛めてしまい、もみ返しを引き起こす可能性があります。少し物足りないくらいの圧で、優しくマッサージするようにしましょう。
フォームローラーなどのセルフケアグッズを使うのもおすすめです。筋肉を傷つけないよう、弱い力をかけながらゆっくりほぐしていきましょう。
筋肉痛のときの運動・筋トレはどうする?

「筋肉痛があるときでもトレーニングをしていいの?」という疑問を持つ方は多いでしょう。ここでは、筋肉痛と運動の関係について解説します。
超回復のメカニズムを理解しよう
筋トレは筋肉を傷つけ修復する過程で「破壊と再生」を繰り返し、筋組織を太く、強くしていきます。ダメージを受けた筋繊維は、栄養と休息により24〜72時間かけて徐々に回復します。
このとき、筋肉は単純に元の状態に戻るのではなく、以前より少し太く大きくなります。この現象を「超回復」といいます。超回復を繰り返すことで、筋肉が成長していくのです。
超回復に必要な時間は筋肉の部位によって異なります。
- 腹筋、ふくらはぎ:約24時間
- 上腕二頭筋、上腕三頭筋、三角筋:約48時間
- 胸筋、背筋、太もも:約72時間
私の場合、脚のトレーニング(スクワット)をした後は、2〜3日は脚のトレーニングを避けるようにしています。トレーナーからも「超回復の時間を確保することが筋力アップの近道」とアドバイスを受けました。
筋肉痛がある部位のトレーニングは控える
筋肉痛は、筋繊維が傷つき修復が終わっていないという体からのサインです。筋肉痛がある状態でさらに同じ部位をトレーニングすると、筋繊維の回復が十分に行えず、筋肉痛が長引く原因になったり、十分な筋肉の成長が得られなくなったりします。
また、筋肉痛があるときは筋力や関節の可動域が狭くなっているケースが多く、そもそもトレーニング効果はあまり見込めません。怪我をする可能性も高まります。効率よく筋力アップするためにも、筋肉痛があるときは休養するのがおすすめです。
筋肉痛のない部位なら鍛えてOK
「1日も休みたくない」という方は、筋肉痛のない部位を鍛えましょう。これを「分割法」といいます。
例えば、下半身に筋肉痛が出ていれば上半身の筋トレをする、太ももに出ているときは上腕を鍛えるなど、部位を変えることで毎日トレーニングを続けることも可能です。
あらかじめ筋トレのスケジュールを組んでおき、定期的に部位を変えるなどの工夫をするとよいでしょう。私もパーソナルトレーニングでは、1回目は上半身メイン、2回目は下半身メインといったように、部位を分けてトレーニングしています。
ひどい筋肉痛を予防する5つのポイント

ひどい筋肉痛にならないための予防法も知っておきましょう。ちょっとした心がけで、筋肉痛の発生を抑えることができます。
運動前のウォーミングアップを必ず行う
急に激しい運動をすると筋肉に負荷がかかり、筋肉を損傷しやすくなります。運動前は反動をつけながら体を伸ばす「動的ストレッチ」を行い、柔軟性を高めましょう。
ラジオ体操をするのもおすすめです。5〜10分程度でも、筋肉の温度を上げ、血流を良くすることで、筋肉痛の予防につながります。
運動後のクールダウンで疲労蓄積を防ぐ
激しく動いた後、急に動きを止めると、血液の循環が急激に落ちます。疲れていても血流を持続させるために、軽い運動を行い、徐々にスピードを下げてから停止しましょう。
クールダウンの後は、よく使った筋肉をもみほぐすために、静的ストレッチを行いましょう。運動後のストレッチは、筋肉の緊張を緩め、筋肉痛予防に効果的です。
普段から適度な運動習慣を持つ
筋肉痛は、普段使わない筋肉を急に動かしたときに起こりやすくなります。使わない筋繊維は少しずつ細くなり、毛細血管が閉じてしまうため、少しの運動でも損傷しやすくなるのです。
普段から全身を動かす有酸素運動を取り入れて血流をよくし、毛細血管のすみずみまで酸素や栄養を届けるよう心がけましょう。週2〜3回、30分程度のウォーキングやジョギングでも効果があります。
こまめな水分補給を忘れずに
運動で汗をかくと、水分が失われて血行が悪くなり、筋肉痛の原因となります。脱水による循環不全を改善し、筋肉痛を予防するために、運動前は必ず水分を摂り、運動中も200ml程度をこまめにゆっくり飲むのが効果的です。
運動後は失った水分を取り戻す必要があるため、のどの渇きを感じていなくても、水分を摂りましょう。
運動前後の栄養補給も重要
運動を行う日は、筋肉痛予防のためにも朝食をしっかり摂り、活動に必要なエネルギーを蓄えておきましょう。エネルギーとなる炭水化物、筋肉の合成に必要なたんぱく質が豊富な和食は理想的なメニューです。
運動前にアミノ酸を摂取するのも効果的です。筋肉の分解を抑え、エネルギー源となるため、筋肉痛の予防につながります。
筋肉痛が長引く場合は要注意

通常、筋肉痛は数日から1週間以内に治まります。しかし、それ以上痛みが続く場合は注意が必要です。
1週間以上続く場合は病院へ
筋肉痛は通常1週間以内によくなることがほとんどですが、もしそれ以上に痛みが続くなら、「線維筋痛症」「リウマチ性多発筋痛症」など、筋肉の病気の可能性もあります。
また、肉離れやその他の怪我を起こしている可能性も考えられます。1週間を経過しても痛みが続く場合は、早めに整形外科を受診し、医師に相談することをおすすめします。
こんな症状があったら受診を
以下のような症状がある場合は、単なる筋肉痛ではない可能性があります。
- 安静にしていても激しい痛みが続く
- 患部が大きく腫れている
- 患部に熱感が続く(3日以上)
- 内出血や変色が見られる
- 関節が動かせない、または可動域が著しく制限される
- 全身の倦怠感や発熱を伴う
これらの症状がある場合は、肉離れや腱の損傷など、より深刻な怪我の可能性があります。自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
ひどい筋肉痛への対処法をまとめます。
急性期(痛みがひどいとき)は、患部を冷やし、安静を保ちましょう。必要に応じて鎮痛剤や外用薬も活用します。
回復期には、以下の7つの方法で積極的にケアすることで、早期回復が期待できます。
- 38〜40度の入浴で血行促進
- 温冷交代浴でさらに効果アップ
- 静的ストレッチで筋肉をほぐす
- 軽い運動で血流改善
- たんぱく質やビタミンB群などの栄養補給
- 質の良い睡眠で成長ホルモン分泌
- 優しいマッサージで筋肉の緊張をゆるめる
筋肉痛があるときは、その部位のトレーニングは控え、超回復の時間を確保しましょう。どうしてもトレーニングしたい場合は、筋肉痛のない部位を鍛える分割法がおすすめです。
予防には、運動前のウォーミングアップと運動後のクールダウン、普段からの適度な運動習慣、こまめな水分補給、適切な栄養補給が効果的です。
私自身、パーソナルトレーニングを始めた当初はひどい筋肉痛に悩まされましたが、これらの対処法を実践することで、徐々に筋肉痛との上手な付き合い方が分かってきました。今では筋肉痛を「筋肉が成長しているサイン」として前向きに捉えられるようになっています。
ひどい筋肉痛は辛いものですが、適切な対処と予防を心がけることで、快適なトレーニングライフを送ることができます。1週間以上痛みが続く場合は、必ず医療機関を受診してくださいね。